TENET
TENET初日初回鑑賞の速攻レビュー。ややネタバレありです。
難解すぎてとてもじゃないけど一度の鑑賞では理解しきれない。
物語の構成
150分の枠に収めるために、かなり物語のテンポが早い。ストーリー上必要な出来事が終わるとすぐに、次のカットに移り、もうその本筋ど真ん中のシーンが進行しているようなイメージ。
観ている側は、映像表現のインパクトと難解な時間の逆行の仕組みを頭で咀嚼するひまなく、グイグイと連れて行かれてしまう。
だが、そこで物語から脱落してしまうかと言うとそうでもない。
劇中でもわざわざコメントされるとおり「考えずに、受け入れる」だけでもこの作品を十分に”体験”することができる。理解するのは映画館を出たあと、自分の記憶のピースを頭の中で再構築しながら。
物語の核となるギミック
150分のうち半分過ぎたあたりで登場する「逆行する時間の中の人物」が明らかになってくると、散らばった伏線が次第に回収されていく。
その伏線回収に必要な逆行するための「回転ドア」の仕組みと、その前後の映像表現がとても難解で、ここで多くの人の頭が処理能力を超えてしまうのではないかと思う(自分もそうだった)。
背骨となるストーリーはそんなに難しくはないけれど、画面の中で表現されている状況に頭が追いつかない感じ。
この映像表現は、ストーリーが進むにつれてより複雑化していき、「考えずに、受け入れる」ことがでず理解しようとすると頭の中が「???」を引きずったままになってしまう。
逆行する時間と巡行する時間
TENETの画面で起きていることは「巡行する時間軸の行動と、逆行する時間軸の行動が同時進行で起こる」と表現できると思う。
これはインセプションで見せたある次元の行動が別の次元に影響を及ぼす、をさらに進化させた視覚効果のように感じた。そういう意味でTENETは、ノーラン監督お得意の時系列を映像表現の中に埋め込むという作風の集大成的な作品になっていると思う。
凝った画作りの一方、ストーリーはかなり犠牲にされており、インターステラーのようなわかりやすいテーマ(家族愛)を据えていないため、感情移入はかなり薄いように感じた。
感情移入できない理由
ストーリーに感情移入しにくいのは主人公とロバート・パティンソンが協力するに至るドラマの部分が本作の最後のまだ先の話であるからだと思っている。
ロバート・パディンソンの視点でみるとこの映画めちゃくちゃ胸熱で、どんなエモい展開があって主人公に共感し、自己犠牲の精神で世界の破滅を防ぐためにひと肌脱いで、作戦を決行するに至ったのか?
それを考えると、ラストの主人公「名もなき男」の涙の理由は、まだ自分が見ていない未来を想っての涙だったのだと思う。
エンドロール終わって明かりがついた後の劇場の雰囲気としては、なにかすごいものを見てしまった!というよりは、自分含めてCPU使用率が高いままで処理が終わらないパソコンのような感じ。
このコロナの世界に超大作の新作映画が帰ってきたことを祝いつつ、2度目を早く見に行かねば!
2回目見てきた
10/15追記。
ニールの視線と表情ばっかりが気になった。伏し目がちで、たまにニヤリと笑う口元。ちゃんと”分かってる”演技をしている。
表現したい内容に対して時間が足りてないような気がした。150分という長尺ながら。これは圧倒的に情報量も多くストーリーも複雑なため。
特に、クライマックスのスタルク12のシーンは、見覚えのないカットが多かったように思えた。初めて見た時は頭が処理できていなかったと思う。
そういう意味でも作品を分割してもっと丁寧に描き描いて欲しかったと思う。見る側としてももっとこの作品を長く楽しんでみたい。